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幼女戦記 8 In omnia paratus ――― 老人<愛国者>の覚悟、幼女<バケモノ>の保身

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幼女戦記 8 In omnia paratus
著者:カルロ・ゼン
イラスト:篠月しのぶ
発売元:KADOKAWA
発売日:2017/6/30











【注目キャラクター】



「おおよそ『作戦』『戦役』『会戦』『決戦』という単語は、そこで激戦が行われているかのような幻想をもたらす最高の言葉である。

 たしかに、そこで、戦闘行為は行われるのだろう。

 だが、実際のところ東部戦線においては緩慢な出血こそが両軍を真に蝕んだのである。

 主要な作戦行動が行われていない膨大な戦域における小競り合いこそが、

 従軍将兵をして 『あの東部』 と物語らせる代物であった。」



アンドリュー
幕間などに登場する後世の記者。通信社「ワールド・トゥデイズ・ニュース(World Today's News)」所属。
若き日にはかつての世界大戦に従軍記者として関わったこともあるベテラン。一般に流布される世界大戦の話に疑念を抱き、敗戦した帝国の真実を求めて調査を続ける。特に、機密解除された当時の国家情報で、世界大戦の主だった戦闘に必ず登場する11文字の伏せ字「XXXXXXXXXXX」を「11番目の女神」と呼び、部隊番号V600番の謎と共に生涯を掛けてその正体を追う。












【レビュー】










   「人材、食糧、砲弾、すべてが不足すれども 

   勝利依存症の帝国は戦争を止められない。
  
   苦しかろうとも、続けるしかない。

   足りない火力は、血と覚悟で埋めるのみ。


   さあ、起こりうるすべてに備えよう。








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連邦資源地帯への大規模攻勢作戦『アンドロメダ』。
無謀を説いていたゼートゥーア中将は参謀本部から東部への『栄転』に至る。

先細った連絡線、破たん寸前の兵站網、極めて長大な側面の曝露。
要するに、誰もがオムツの用意を忘れているのだ。
かくして、ゼートゥーア中将はレルゲン戦闘団へ特命を下す。

指揮官たるターニャに命じられるのは退却の許されない籠城戦。
勝たねばならない。
(作品紹介より)

















■歴史の目撃者達





今巻の始まりは、劇中の 【大戦】 終結後の未来。


ある記者と連合王国軍の将軍の対話の場面から描かれている。


2人は、”あの” 東部戦線で知り合い、共に大戦を生き延びた戦友とも言える間柄である。


そこで語られていたのは、東部戦線をはじめとする大戦の裏の真実。


正史では決して語られることのない、あの時代に生きた者しか知りえない真実。










今巻では、未来の時系列であったり、歴史的な観点から物語時系列を振り返る描写が見られた。


これは、第1巻で見られた手法だ。


これまではターニャの主観的に話が進行してきたわけだが、ここにきて ”歴史” としての顔が出始めた。


個人的な邪推ではあるが、このことは、本作の終わり=帝国の敗戦 が近づいているということを意味しているのだと理解した。


もはやターニャ1人の力では歴史を変えることはできず、後は、その道筋に沿って物語は展開されていくのみである。


我々読者は、変えられない未来というものを神の目線で認識しながら、懸命で保身に奔るターニャの行動をどこか滑稽さを感じながら見守るしかない。


きっとこのシナリオは、大戦が勃発したときから、全てが決まっていたことなのだ。















■”勝利依存症”の【帝国】





そもそも、なぜ帝国は、引き返すことができないほどに戦争にのめり込んでしまったのか。


戦争を終わらせる機会は、少なくはあったが、まったくなかったわけではない。


特に前巻で 【鉄槌作戦】 をターニャの活躍で成功したにより連邦軍に致命的な損害を与えたときは、講和に持ち込むための絶好のタイミングであったはずだ。


しかし、それは実現しなかった。


帝国の最高レベルの意思決定の場である 【最高統帥会議】 で戦争の継続、そして更なる大勝利を目指すことが決定されたためだ。











このことについて、ターニャは信じられないと驚愕したが、ゼートゥーア中将は、『勝利への慢性的中毒症状』 『極めて善良な人々が、死者に支配されている』 と表現した。


つまり帝国は、”これまで払った多大なる犠牲” に見合う勝利がなければ意味がないという、合理的思考からは逸脱した愚考に陥ってしまったということだ。


この結果は、経済学用語でいう 【埋没費用】 の考えから、まったく誤ったものだということがわかる。





【埋没費用(まいぼつひよう、英: sunk cost 〈サンクコスト〉)】

事業や行為に投下した資金・労力のうち、事業や行為の撤退・縮小・中止をしても戻って来ない資金や労力のこと。


事例1:つまらない映画を観賞し続けるべきか

2時間の映画のチケットを1800円で購入したとする。映画館に入場し映画を観始めた。10分後に映画がつまらないと感じられた場合にその映画を観続けるべきか、それとも途中で映画館を退出して残りの時間を有効に使うべきかが問題となる。

①映画を観続けた場合:チケット料金1800円と上映時間の2時間を失う。
②映画を観るのを途中でやめた場合:チケット代1800円と退出までの上映時間の10分間は失うが、残った時間の1時間50分をより有効に使うことができる。

この場合、チケット代1800円とつまらないと感じるまでの10分が埋没費用である。この埋没費用は、この段階において上記のどちらの選択肢を選んだとしても回収できない費用である。よってこの場合は既に回収不能な1800円は判断基準から除外し、「今後この映画が面白くなる可能性」と「鑑賞を中断した場合に得られる1時間50分」を比較するのが経済的に合理的である。

しかしながら、多くの人は1800円を判断基準に含めてしまいがちである。(wikipediaより)







投下済みの費用に引きずられて、未来に向けての合理的な判断ができないということは世の中結構あるものだ。


国内では、民主党政権交代時に議論になった【八ツ場ダム問題】が該当するだろう。


また国際的には、イギリスとフランスが共同に開発した超音速旅客機コンコルドの事例により、【コンコルド効果】とも呼ばれている。















■”終わりの始まり”





「・・・・・これは、このままでは、今の道では、だめだな」

”ライヒに黄金の時代を。”

 ・・・・黄昏だとしても、陽はまた昇ると示さねばならん。

 期待しているぞ、中佐」






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この作中のゼートゥーア中将のセリフを読んだとき、背筋が凍りついた気がした。


中将は、遂に悟ってしまったのだ。


帝国の”勝者”としての道が完全に閉ざされてしまったことに。


で、あれば、【帝国の勝利】 の定義を変更しなければならない。


その変更された勝利への片棒をターニャに担がせた瞬間が上記の場面である。










後世の歴史上で ”恐るべきゼートゥーア” として語られる彼の出発点は、ここにあったのだと思う。


”ライヒに黄金の時代を。”


果たして ”その時” が、いつ訪れることを想定しているのか。


勘の良い者なら、察するに容易いことだろう。


さあ、終わりへの賽は投げられた。


後は、その過程を楽むだけだ。











































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[ 2017/07/19 12:00 ] ライトノベル | TB(0) | CM(0)
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