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幼女戦記 9 Omnes una manet nox  ――― 幼女<バケモノ>さえ抜け出せぬ混沌。

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幼女戦記 9 Omnes una manet nox
著者:カルロ・ゼン
イラスト:篠月しのぶ
発売元:KADOKAWA
発売日:2018/1/12











【注目キャラクター】



「参謀将校という怪物であり続けることができん。

 弱々しいただの人間だ。

 一度は怪物たらんと欲した身だが、無理だった。」



マクシミリアン・ヨハン・フォン・ウーガ
帝国軍参謀本部鉄道部所属。大尉(7巻時点で中佐)。
軍大学でのターニャの同期で妻子持ち。非常に優秀な人物で(本人にはその自覚はなかったが)ターニャからライバル視されており、彼女のライバルを減らす目的の諫言によって大学卒業後は傍流の鉄道部所属となる(本人は善意からの諫言だと思っており、感謝している)。鉄道部では才幹を発揮して、鉄道運用の専門家として破綻しかけている兵站を支えている。また、ターニャとの交友関係も続けており、情報交換の他、彼女の要望でチョコレートやコーヒー豆をこっそり贈るなどする。












【レビュー】





――――― 『終わりの始まり』


 恐ろしすぎる可能性。

 リアルな感覚を伴って脳裡を過るのは背筋が冷えて仕方ない。

 明るく笑いとばそうにも、事態は余りにも深刻に過ぎた。






イメージ (10)










      


幼女(バケモノ)さえ抜け出せぬ混沌。

療養・再装備のため、帝都へ帰還したレルゲン戦闘団。
そこで目にしたのは、死という非日常に慣れてしまった祖国の日常だった。
激烈に損耗し、閉塞感に囚われた帝国の世論はあまりにも『勝利』を渇望してやまない。

そして新たにターニャに与えられた「無理」な仕事は、潜水艦による敵戦隊の捜索撃滅。
秘密兵器はMAD手製の大型魚雷。

死力を燃やし尽くしてなお、その先にも暗闇が横たわる。

己に平穏を――。

ターニャのささやかな願望さえも、あまりに遠い。
出口のない戦争は激化の一途をたどる。
(作品紹介より)












■ターニャ、帝都の現状を知る





東方戦線から休暇・部隊編成のため帝都に帰還を果たしたターニャ達、レルゲン戦闘団。


そこで、目の当たりにしたのは、”戦争末期”を確信せざるを得ない後方の惨状だった。


戦場の実態とはあわりにもかけ離れた戦果がプロパカンダとして報道され、しかも問題なのが、その記事を書いている本人達もそれが真実だと信じようとしていることだ。帝都の一流の食堂でされ、全ての食材が”代替品”。もはや、どこにも”本当の味”はなかった。人々は”人の死”というものに慣れ過ぎていて、戦闘訓練は足りていないくせに、戦死者への弔いの儀礼は完璧にこなしている。


戦場が長かったターニャにしてみれば、その現状を目の当たりにして、自分が”異世界人”だと感じてしまう。なんとも皮肉な感想を抱いてしまうほどだ。


今巻の全編を通して描かれているのが、人類初の国家の”総力戦”による多大な代償。多くの人の死と、物の貧しさは、そのまま国民の心までも蝕んでいく。



「帝国の現状をまとめよう。 ……死病に苛まれた壮年というべきか。

 不幸なことに医師以外、下手をすれば当人ですら、

              余命が定められたことに気づきもしていないが」





――――帝国の終わりが近い。


そのことを読者に思い知らせるために、1巻まるまる使って丁寧に話づくりをしているのだと感じた。










■ターニャ、転職を検討する





果然ターニャの心に思い浮かんでくるのが、泥船たる帝国を脱出し、他国への”亡命”の検討だ。


そこは、前世がエリートサラリーマンということで、ターニャは”転職”という言葉を使っている。



「転職するにしても、『今の職場に籍を残したまま』やるのは当然だ。

 一流企業からの転職であれば足元を見られるずに済むが、
 
 失業しての求職は待遇面で足元を見られてしまう。」


「最高の待遇を受けていた人間を

  『引き抜く』のであれば好待遇は当然だが、

 『首にされかけた元好待遇人間』というのは

 往々にして市場価格が目減りする。」




ターニャが”転職活動”に勤しむようになるのも、時間の問題かもしれない。










■ターニャ、戦後の”印税生活”を夢想する





合理性の塊のようなターニャであるが、自分の現世の祖国や、そこで出会った同僚等にまったく思い入れがないわけではない。ターニャは、基本的に”善良な市民”であり、愛国者としての義務を果たす理想的な軍人である。・・・・・幼女だけど。


客観的に帝国の敗戦が濃厚だとて、まだ、それを回避できるような可能性を捨てきれずにいる。


それが、作中のターニャとルーデルドルフ中将の他愛無い会話から垣間見ることができる。



「貴官が、そこまで平和愛好家だとは知らなかった」



「臆病者ですので」



「銀翼持ちの臆病者? 貴様が? 
 驚いたぞ、中佐。 何かの童話になるな」




「参謀本部のご出版で? 印税を期待させてください」



「はっはっはっ、印税か! 印税と来たか!」

「いいとも 中佐。

 無事に戦後を迎えられればの話だぞ。

 貴様の告白を童話にしてやろうじゃないか。

 参謀本部の全額負担で一冊の絵本として出してやろう」




「なんとも光栄極まりません。」



「せいぜい、終戦の日まで生き残れ。

 貴様の秘めたる恥を、大公開してやろう。

 今更止めたところで、無駄だぞ、中佐」




「憧れの印税生活のためであれば、何としても生き残らねば」



2人とも本当にそのような日が恐らく来ないだろうと知りながらの会話だ。そう考えるとこみ上げてくるものがある。


しかし、まったく希望がないわけではない。目の前にはどうしようもないほどの絶望が広がっているが、それをどうにかしてやろう、笑い飛ばしてやろうという、2人の気概を読み取ることができた。
































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